人文学部


望月ゆか 准教授


望月 ゆか(もちづき ゆか)

■略歴

1964年 神奈川県横浜市生まれ
1982年 フェリス女学院高等学校卒業
1986年 国際基督教大学教養学部(語学科)卒業
1989年 東京大学大学院修士課程総合文化研究科(比較文学比較文化専攻)修了
1992年 京都大学大学院修士課程文学研究科(仏語仏文学専攻)修了
1992~95年 日本学術振興会特別研究員(DC)
1993~94年 フランス政府給費留学生
1994年 パリ第4大学(ソルボンヌ)仏文学科DEA(博士論文提出資格)取得
1996年 京都大学大学院文学研究科博士課程単位修得退学
1996~99年 日本学術振興会特別研究員(PD)
1999~2002年 フランス国立東洋言語文化研究所日本語科講師
2002年より 武蔵大学人文学部助教授

■主要著作・論文・研究活動など

1.≪Sur les deux feuilles de manuscrit du "Pari" de Pascal≫,Études de langue et littérature françaises, Tokyo, Hakusuisha, 1992
2.≪Le sublime de La Fréquente Communion≫,Le Rayonnement de Port-Royal. Mélanges en l'honneur de Philippe Sellier, Paris, Honoré Champion, 2001
3.≪Un prélude à la guerre civile de la langue française : la polémique littéraire autour du Nouveau Testament de Mons≫,Chroniques de Port-Royal, n°51,2002
4.翻訳 パスカル『恩寵文書』、『メナール版パスカル全集第二巻』(白水社、1994年)所収
5.武蔵大学人文学部ヨーロッパ比較文化学科編『ヨーロッパ学入門』(朝日出版、2005年)、「第9章キリスト教とヨーロッパ」

■専門・所属学会・その他前年の主要社会活動

専門:17世紀フランス宗教思想、キリスト教史
所属学会:日本フランス語フランス文学会、日仏哲学会、Société des Amis de Port-Royal、Centre International de Blaise Pascal、Société d'étude du XVIIe siècle

■メッセージ

 2005年暮にトルコのイスタンブールに旅行に行ってきました。将来のEUへの正式加盟が決定し、正式な加盟交渉が始まったトルコですが、EUにおける初のイスラム国家ということで、フランスなどでも加盟反対の立場を取る人々がかなり見られます。実際に訪れたイスタンブールは、モスクの塔の合間をメトロや市電が走る近代的な中心地では、アタチュルク(トルコ近代化の父)以降の近代化政策の最先端を行く「ヨーロッパ」的な性格が強調されています。一方、少し中に入ると最近現れたイスラム原理主義(トルコの国自体は政教分離政策)の旗がはためき、ヴェールをかぶり黒い地味な靴をはいた女性たちが多く見られる「アジア」的・「イスラム」的な部分一色となりました。トルコのなかでももっともヨーロッパ的な都市であろうイスタンブールを離れると、後者の要素がどんどん強くなってくるのでしょう。
 
ただし、トルコにはイスタンブールにも奥地にもキリスト教の文化遺産が数多くあります。キリスト教の世界への布教に貢献のあった聖パウロが生まれたのは現トルコのタルソでしたし、イスタンブールというのは4世紀から1543年までコンスタンティノープルと呼ばれた東ローマ(ビザンティン)帝国の首都で、コンスタンティノープル総主教は長らく西のローマ教皇以上の権力をもっていました。イスタンブールには、モスクに改装された東方(ビザンティン)教会の教会がいくつか残っており、その中でもハギア・ソフィアなどの有名な場所はアタチュルク以降美術館となっています。西方教会と違って三次元の彫刻は見られず、平面のモザイクやフレスコ画の装飾が特徴的です。西方世界では偶像崇拝を嫌うプロテスタントが宗教改革の際にカトリック教会の彫刻を破壊したのに対し、同じく偶像崇拝を斥けるイスラム教徒はビザンティン教会の壁のモザイクを塗りこめたのです。おかげで近代になって西欧の美術使節団が派遣されたとき、9世紀から14世紀にかけての美しいモザイクの全体像が当時の色合いも鮮やかに復元されました。
 
パリに戻っていつものカトリック教会のミサに行き、キリスト磔刑の彫像やマリア像のステンドグラスに再会しましたが、ビザンティンの教会とあまりに雰囲気が違うので、ほっとすると同時に、これが同じキリスト教かと不思議に思ったほどです。日本は主に西方教会の宣教師が布教したので、教会の装飾も西欧風です。
 
トルコがキリスト教のゆりかごだったことは、世界史を学んだ日本人には当然かもしれませんが、意外とフランス人の会話にはのぼりません。イスラム圏という姿以前のビザンティン教会自体が、カトリック世界のフランスでは一部の例外を除いて縁遠い世界のようです。ただ、ビザンティン教会を訪問するには『地球の歩き方』は不十分で、フランス語の2冊のガイドが大きな助けとなりました。日本とフランスと二つの文化と言語に通じているおかげで、充実したイスタンブール旅行ができました。モスクの美しいタイル装飾や一日五回各モスクから響く祈りの呼びかけなど、初のイスラム圏の体験もできました。次回のトルコ旅行ではイスラム教についてもっと学ぶとともに、内陸のキリスト教初代教会の遺跡を訪れてみたいと思います。