新田 春夫(にった はるお)
■略歴
昭和19年4月 富山県生まれ
昭和38年4月 東京大学教養学部文科三類入学
昭和42年4月 東京大学大学院人文科学研究科独語独文学専門課程
修士課程入学
昭和44年4月 東京大学助手(教養学部)
昭和50年4月 東京医科歯科大学助教授(教養部)
昭和53年4月 東京大学助教授(教養学部)
平成3年4月 東京大学教授(教養学部)
平成5年4月 東京大学大学院教授(総合文化研究科言語情報科学専攻)
平成9年4月 武蔵大学人文学部教授(現在に至る)
申年生まれのせいか、子供の頃、親から落ち着きがないとよく叱られました。今でもまだせっかちだと思います。
歴史が好きだったので、西洋史でも勉強しようかと思って大学に入ったのですが、そこで初めて習ったドイツ語に興味がわき、ついにドイツ語学を専門とするようになりました。
助手の時にドイツ学術交流会の奨学生として3年間、また、助教授の時にフンボルト財団の研究員として2年間、ともにボン大学に留学しました。文学部など主要な学部のある建物はバイエルン選帝侯ヴィッテルスバッハ家などの居城だったものです。ボンはライン川に臨み、対岸にはニーベルンゲンの英雄ジークフリートが竜を退治したという伝説の残るジーベンゲビルゲの丘陵が見える美しい町です。私はよく滔々と流れるラインの岸辺のベンチに座って行き交う観光船を飽くことなく眺めたものでした。また、町中にはベートーベンの生家やシューマンの住んでいた家、また、北墓地には彼とクララのお墓などがあります。
■主要著作・論文・研究活動など
1.ドイツ語、ことばの小径-言語と文化の日独比較(大修館書店)
2.クラウン独和辞典(共著)(三省堂)
3.大独和辞典(共著)(小学館)
4.加藤雅彦編「事典 現代のドイツ」(大修館書店)第5章 ドイツ語
5.結合価理論からみた日本語の文型(言語・情報・テクスト Vol.2 東京大学大学院総合文化研究科言語情報専攻紀要)
1はやさしい言語学入門のつもりで書きました。日本語とドイツ語をいろいろな面から比較・対照することによてそれぞれの特徴を明らかにしようとしています。
2は、単に語義や用例だけでなく、関連語一覧、類義語の意味や用法の違い、日本語との違いなどの説明や注も豊富にあり、ドイツ語学習辞典も兼ねています。
3は見出し語が16万、用例が18万もあり、日本で出版された独和辞典の中でいちばん大きなものです。ドイツ文化を専攻する人に勧めます。
4はドイツ・ハンドブックで、ドイツの社会、政治、経済から歴史、言語、文化、芸術、宗教に至るまで、総合的にドイツを紹介し、さまざまなデータをたくさん載せています。
5のタイトルの結合価理論とは、文の中心は動詞であり、動詞によって主語や目的語の数と格が決まっているという考えです。この論文は結合価理論に基づいて日本語の動詞を分類し、日本語の文型を記述したものです。
■専門・所属学会・その他前年の主要社会活動
近世ドイツ語史、日独対照言語学、独和辞書編纂
日本独文学会会員、国際ゲルマニスト学会(IVG)会員
ドイツで日常的に耳にするドイツ語は学校で習う標準ドイツ語とは違っています。ボン近辺の方言はむしろオランダ語や英語に近いのです。また、初対面の人には敬称のSie(あなた)を使うとも習いますが、大学生同士は最初から親称のdu(君)を使うなど、学生言葉も標準語とは違います。このように、現実のドイツ語は複合的な体系をなしています。そのようなことから現代標準ドイツ語がどのような社会的、歴史的プロセスを経て成立したかという問題を主要な研究テーマとしています。
国際ゲルマニスト学会は5年に一度、各国の持ち回りで開かれます。私はこれまで東京、ヴァンクーヴァー、ウィーンで、そして昨年はパリの学会で発表しました。その際ついでにパリや近郊を散策してきました。2010年はショパンの故郷であるポーランドのワルシャワですので今から楽しみにしています。ポーランド語も勉強しようかと思っています。
■メッセージ
外国に旅行することの楽しさは自らとは異なった生活や文化を知ること、つまり、異文化体験にあると思います。しかし、外国の人たちも同じ人間ですから、感じることや考える内容には大差ありません。何が違うかというと、同じ水でもそれを入れる容器の違いによってさまざまな形になるように、外国の人たちの感情や思想を盛る形式である「ことば」です。ですから、異文化体験は「ことば」を通じて初めて可能になるのです。「ことば」について私と一緒に少し理論的に考えてみませんか。

