人文学部


山崎光治 教授


山崎 光治(やまさき みつはる)

■略歴

香川県生まれ
東京大学教養学科卒業
東京大学大学院比較文学比較文化修士課程修了
岡山大学講師を経て、武蔵大学就任

■主要著作・論文・研究活動など

 授業でやっていることと関連させて、現在の研究状況を述べてみたい。
(1)ジョン・ロック、ディヴィッド・ヒュームといったイギリスの古典経験論の哲学が、私の研究の出発点である。最近は「英米思想史」の授業でイギリス思想史を教えることはほとんどないが、「入門演習」では哲学の入門的なことをやっている。哲学入門というと西洋の哲学者を何人も登場させて、哲学とは何かを論じることが多い。しかし哲学とは何かを知る一番よい方法は、1人の哲学者を徹底的に考えぬくことである。そのうちヒュームという哲学者1人をもとに『哲学入門』を書いてみたいと思っている。
(2)哲学は具体的な現実の中で考えなければならない、というのが私の基本的な考えである。イヴァン・イリイチというユニークな思想家を通して、産業社会が抱える問題、さらにそれらの問題をどう乗りこえていくかの方向を考えた。グローバリゼーションが引き起こした問題、あるいはグローバル化にかわる世界のあり方について、イリイチの議論は最近の論者よりも的確で、深いように思われる。イリイチの再評価が必要だと考えている。少し古いが、武蔵大学の紀要に書いているので、興味のある人は参照してほしい。
 
「I・イリイチの哲学」(『武蔵大学人文学会雑誌』第十七巻第四号。昭和61年3月)
(3)イリイチの『ジェンダー』という著作をきっかけに、フェミニズムに関心をもつようになり、近年は「英米思想史」の講義でフェミニズムの理論と歴史を教えている。日本ではフェミニズムは社会的現象として捉えられることが多く、もうフェミニズムは終りだという声も聞かれる。しかし、それは皮相な見方で、思想としてのフェミニズムの意義を十分に捉えているとはいえない。フェミニズムは、オリエンタリズム、植民地主義、人種差別などと共に、近代ヨーロッパ思想を反省し、再検討する時の重要な手がかりとして考えなければならない。フェミニズムというプリズムを通すことで、近代ヨーロッパ思想の限界や偏向がはっきり見えてくる。そういう意味でフェミニズムは現代思想を語る上でも最も重要な領域の一つであると言える。
(4)今まで述べてきたことは、比較文化という広い立場から日本文化を理解するための予備作業かもしれない。現在私はヨーロッパ文化の背景にあるキリスト教と、日本文化の根底にある仏教との比較研究を進めている。この方面に関心のある学生は、「英語圏の宗教と思想」「英米比較文化演習」に出てほしい。私がどのようなことを考えているかを知るには、十分とは言えないが次の論文を参照してほしい。
 
「キリスト教と仏教の比較研究についての覚書」(『武蔵大学人文学会雑誌』第三十一巻第二号。平成12年2月)

■専門・所属学会・その他前年の主要社会活動

 学会および社会活動は休眠状態である。古本屋をまわったり、図書館の片隅で人知れず生きている。

■メッセージ

 現代社会は表面だけを思いっきりかき回している社会である。このような社会で自分を見失わずに生きていくには、古典を読むことによって確固とした自己と座標軸をもつ必要がある。そのような状態になるまでには、(1)身体をきたえて、丈夫な体になること、(2)物を考え続けること、特に外国語(英語でいい)を通して、物を見、物を考えることが必要だろう。さらに、最近の学生を見ていると仏教において発菩提心(悟りたいと思う心をおこす)ということが言われるように、勉強したいという気持をおこすことが大切であると思うようになった。